News>2010.06.11

 

【寄稿】ITmedia”イノベーションコンセプト入門”  第6回イノベーションコンセプトの実践

 

ITmedia エグゼクティブにおいて、「イノベーションコンセプト入門」の第6回を掲載しました。

イノベーションコンセプト入門:第6回「イノベーションコンセプトの実践」

今回は、イノベーションコンセプトを実践するステップについて述べていきます。

 

<以下掲載文章抜粋>

 

今回は、イノベーションコンセプトを実践するステップについて述べていきます。実践に当たっては、さまざまなシーンが存在します。当連載では、イノベーションコンセプトが大きな役割を果たすビジネスモデル開発を中心にプロセスを述べていきます。

 イノベーションコンセプトを構想するためには、いくつかのステップがあります。それは要件確認、構想、具体化、評価検証となります。 

 ステップ1:要件確認とは、イノベーションコンセプトを企画するための要件を指します。具体的には発想するための目的、視点、対象となる聴衆です。目的とは、ビジョン策定や事業戦略立案、製品開発などの具体的シーンが相当します。新たに新規事業企画としてイノベーションコンセプトを考えることもあれば、環境の変化に応じて見直しや刷新するイノベーションコンセプトがあるでしょう。特に事業戦略とはイノベーションコンセプト開発の核でもあります。

 イノベーションコンセプトでは、視点を定める必要があります。顧客視点が基本となり、必要に応じて、競合の視点や社外リソースの視点を組み合わせます。大切なのは全体で見た一貫性であり、顧客視点からの価値の大きさです。例えばリゾート再生で有名な星野リゾートでは、家族向けリゾート施設から親子別々で楽しむリゾート施設へのイノベーションコンセプトを転換しました。

 「どのように提供するか」では、親向けの休息所から子供向けの託児所まで、家族単位ではなく親と子供と分けてサービスを提供しました。

 ステップ2:構想では、「誰に」「何を」提供するのかを構想します。事業戦略やマーケティングの見直しであれば、イノベーションコンセプトの要素を具体的に記述し構想していきます。いままでのコンセプトや既存プレーヤーのコンセプトを洗い出し、新しいイノベーションコンセプトを構想し、違いを位置付け、そして他業界から類推します。

 イノベーションコンセプトとは、必ずしもゼロから考えるわけではありません。むしろ既存の業界の常識から出発し、その常識を覆すような新しい価値基準を生み出すことです。例えばデザイン性やイメージが重要な化粧品業界で、ボディショップは工業製品のごとく、製品機能を強調して成功しました。同様にライフスタイルの表現となるアパレル業界では、工業の汎用製品としてのアパレルを位置付けた、かつてのユニクロの成功があります。

 これら業界の常識を疑い、覆すのがイノベーションコンセプトです。「誰に」「何を」提供するのか、また自社や競合他社の視点から、自社が提供できず他社が提供している価値は何か、自社ならではの価値とは何なのか。また異なる業界から、学ぶべきイノベーションコンセプトは何か、各要素を深堀し定義し、要件と照らし合わせ、四則演算(+/―/÷/×)を行います。イノベーションコンセプトは顧客へのより大きな価値を生み出さなければなりません。

ステップ3:具体化では、「どのように価値を提供するか」という仕組みを決定します。イノベーションコンセプトとは、どこが新しく斬新なのか、既存の製品サービスや既存戦略とどこが異なり、どのような価値を提供するのかを示します。マトリックスなどのツールを使い、違いをビジュアル化し、関係者と共有します。

 お勧めは社外リソースの視点に立ち、利用できる事例やリソースは何か、ほかの業界やプレーヤーでは、どのようにして同様のベネフィットを提供しているのかを討議することです。近年ではオンラインとオフラインの組み合わせやソーシャルメディアの活用、また外部パートナー会社との提携や協業による製品サービスの提供が増えています。アマゾンや楽天、アスクルやフランチャイズ展開を進めるQBハウスも、社外リソースを徹底して活用しています。

 優れたイノベーションコンセプトとは、コンセプトそのものだけでなく、実効性も担保しなければなりません。具体化されたイノベーションコンセプトは、自社の仕組みや業界の慣行を照らし合わせ、何を補えば実行できるのか検証を行います。できない理由ではなく、イノベーションコンセプトの実行性をどのように確立するかが鍵です。

 ステップ4:実行・検証では、具体化したイノベーションコンセプトをいよいよ実施します。完璧な事業計画など存在しないように、完璧なイノベーションコンセプトはありません。その時々の市場のニーズに合った、イノベーションコンセプトがあるだけです。時とともに「誰に」「何を」「どのように提供するか」の各詳細要素を拡大したり、絞り込んだりしながら、事業の成長を目指します。

 イノベーションコンセプト通りにいかない場合、なぜ企画どおりにいかないのか、実行しながら検証していく必要があります。そもそも「何を」となるベネフィットが適切ではないのか、たまたま実行の仕組みとなる「どのように提供するか」が成立していないのか、などが検証ポイントです。

 イノベーションコンセプトとは、新しい本質であるが故に既存の仕組みやビジネスとマッチしないことが多々あります。特に新しい価値を「どのように提供するか」に工夫が必要となります。ユニクロが当初の部品としてのアパレルから方向転換をし、そしてアスクルは、顧客の拡大を続けています。

 次回はイノベーションコンセプトのまとめです。