News>2009.06.01

 

【コラム】”日本人が目指すべきグローバルリーダー像”

 

事業がグローバル化するに伴い、グローバルリーダーの育成が課題となります。グローバルマネジメントにおけるリーダーの役割とは、自社の価値観を伝え、メンバーの行動規範をしめし、信頼感をベースとしたリーダーシップを構築することです。異文化環境において、メンバーを共通の組織目標に向けてリードするためには、自社の意思決定やコミュニケーションのあり方を定義し共有し実践していくことです。それは自社の価値観を基盤にチーム主体の意思決定を訴え、双方向の対話を促すコミュニケーション行い、メンバーの行動に規範を与えなければなりません。

日本人の視点から見たグローバルリーダー像とは、チーム型を主体としたマネジメントを構築し実践することにつきます。ではこの実践のためにどのような要件が日本人のグローバルリーダーに求められるのでしょうか。これは1)チーム型マネジメントの確立、2)論理的コミュニケーション力、3)ビジネス英語、さらには4)日本人特有のアプローチの活用です。

最初に1)チーム型マネジメントの構築があげられます。チーム型マネジメントとは、メンバー主体の合意形成による参加型意思決定のマネジメントになります。欧米企業にありがちな個人を主体としたトップダウン型意思決定ではなく、チームを主体としメンバーの全員参加型の意思決定です。チーム型マネジメントのリーダーとは、統制や命令を行う意思決定者(Decision Maker)ではなく、メンバーの自主性をひきだし、徹底的な権限委譲を行うファシリテーターでもあります。

日本人のグローバルリーダーにとっては、自社のあるべきチーム型マネジメントを構築し、世界規模で実践することが主要課題です。異文化のコンテキスト(文脈や背景)ではなく自社のスタイルに沿ったチーム型マネジメントを構築し、日本人のリーダーシップを実践していくのが良いでしょう。チーム型マネジメントのルールが決まれば、社訓や行動規範、黄金律(Golden Rule)、または我々のやり方(Our Way)などとして、明文化し標榜するのがお勧めです。チーム型マネジメント構築の際には、コンサルタントや識者を招き、ファシリテーターとして意見調整をしてもらうのも良いかもしれません。

次に2)論理的コミュニケーション力の獲得があります。前提となるチーム型マネジメントの構築とともに、折衝、プレゼンテーション、グループミーティングの場においてメンバーを説得するリーダーシップの確立が要件です。グローバルマネジメントにおいては、メンバーとの討議において、論理的コミュニケーション力を発揮することが求められます。異文化環境では、言語にて自社マネジメントを明快に説明しなければ、メンバーに理解されることもありません。自社のチーム型マネジメントとは何か、どのように実践すれば良いのか、メンバーの理解を促し、奨励する具体的行動まで共有することです。

ここでの論理的コミュニケーション力とは、自社が標榜するチーム型マネジメントを説明し、メンバーと討議する中で説得し、必要性を証明することを指します。論理的コミュニケーション力の強化には、参加者が発表や討議を行う双方向によるワークショップ型の研修が良いでしょう。研修では参加者が自らのテーマを選択し、チーム型マネジメントと合わせてリーダーシップ像を発表し、論旨明快なリーダー像を構築していくことです。自社の価値観を討議し、人材評価の基準にまで共有することを目指します。

またリーダーシップを発揮するには、メンバーからの信頼感の獲得が大前提となります。欧米では信頼感を獲得するプロセスが日本国内と異なります。メンバーにとってフェア(公平)であるか、フェアプレイコンセプト(Fair play concept)の実践が鍵です。フェアであることは、欧米人の間では絶対的な価値観の一部となります。新しいチームや海外赴任の際には、部門や部署のミーティングのコミュニケーションルールとして、行動規範とともに、フェアプレイコンセプトを作成し標榜するのがお勧めです。

次に3)ビジネス英語の習得があります。英会話ができることと海外ビジネスの遂行とは全く別の要素です。英語ができる海外子女を要職に投入して思うような成果が出ないことがよくおこります。キッコーマンが米国市場参入の際には、英語ではなくビジネスセンスがある人材を配置して成功しました。*これは英語ができなければ通訳をつけて代替できるが、ビジネスセンスを代替することはできないからとの理由です。

実際にビジネスシーンで使用される英単語とは大体300語です。動詞50語、機能別専門用語150語、そして経営用語100語くらいで合わせて計300語という計算です。とすればこの300語をまとめて学ぶことで最低限の英語力を備えることができます。特に自社の文化や価値観を反映するチーム型マネジメントに関わる用語については、用語集としてまとめ、研修プログラムに活かしていくのが良いでしょう。英会話をすることではなくビジネス遂行するための英語を具体的に定義し活用することが重要です。

最後に4)日本人特有のアプローチの活用があります。海外ビジネスにおいて、日本人が討議で欧米人と渡り合うのは至難の業です。欧米人は幼少時から因果関係をおさえ、自身の見解を述べることが習慣としています。これは個別アプローチ(Reductionaristic approach)とも呼ばれ、物事には因果関係があり、全体を要素に分解して、個別に検討を行うことで解決できるとするアプローチです。反対に日本人の特徴は全体的視点にあります。これは全体的アプローチ(Holistic approach)とも呼ばれ、個別の要素だけを見るのではなく、全体を俯瞰することで個別要素を全体的に位置づけ、かつ相対的なバランスで解決するアプローチです。

欧米人相手のビジネスには、日本人はこの全体的アプローチを活かすことが鍵となります。討議ではロジックを踏まえながら、前提となる小さな討議範囲を時としては大きく眺めバランス感覚で討議することが日本人の強みを活かすことになります。例えば製品価格戦略について一製品の値下げを検討する際に、他の製品ラインとのバランス、自社の持つブランド、そして競合との位置づけや次期新製品への影響など、視点を広げて討議を深めることで対応します。

以上、簡単に日本人のグローバルリーダー像について具体的に述べました。日本人のグローバルリーダー像とは、チーム型マネジメントを基盤に、論理的コミュニケーション力を強化することに成功の鍵があります。弊社の研修の特徴とは、参加者が持つ個別テーマを取り上げ、参加者が発表し討議することで参加者自身の解決策にたどりつくワークショップ型です。この寄稿が御社のリーダー育成に少しでもお役に立てれば幸いです。

出所) *出所「キッコーマンのグローバル経営」 茂木友三郎著を参照